「みえるとかみえないとか」
『どんなひとにも、じぶんと おなじところは かならずあるとおもう』
「なつみはなんにでもなれる」などたくさんの絵本を手掛ける、人気の絵本作家さんですね。ウチでも「なつみはなんにでも―」と、「こねてのばして」を持っています。ポケ―っとした絵が今風で可愛くて私も娘も大好きです。
ウチで持っている2冊は、わりとゆるっとした内容だったのですが、この本はちょっと違うテイストでした。
宇宙で降り立った星には後ろにも目がある宇宙人たちがいて、その宇宙人たちとのやりとりからいろいろ考えさせられるお話です。
普通ってなんだろう。障害があるってなんだろう。そうだ、そもそもみんなひとりひとり違うのにね。…といった内容が、子供向けに語られています。
その言葉選びが上手い。“からだの とくちょうや みためは のりもののようなものだ”。―乗り物を選ぶことはできないけれど、その人の本当の気持ちや苦労はずっと乗ってきたその人にしかわからない。
これ、大人でもドキッとする部分でした。本の中でも、後ろが見えない主人公が宇宙人たちに同情されることに戸惑うシーンも描かれます。ゆるっとした絵と直接描きこまれたちょっとしたセリフたちが内容をライトに伝えてくれる絶妙な手助けになっています。
“わからないことはこわいから”―大人でも無意識に生まれかねない差別感情を、わかりやすくかみ砕いて温かい言葉で解決に導いてくれるような、そんな本です。
ウチの娘はというと、大人しく聞いてはいたもののちょっと難しかったのかも、と思えるような反応でした。お話として表面上は理解している風ですが、自分から感想を話す様子もなく。現実社会と結び付けるためにもう少し大きくなってから改めてぜひ読ませたいと思える絵本でした。
「みえるとかみえないとか」
ヨシタケシンスケ:作
伊藤亜紗:相談
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